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黒人ゲイ少年の成長物語!←ってまとめていいのかな(汗)映画『ムーンライト』めちゃくちゃよかった!

映画『ムーンライト』を観ました。雑誌『TIME』で2016年度のベスト1に選ばれるなど、もともと評価が高かったのですが、その評判を裏切らない素晴らしい内容でした。ストーリーだけではなく、編集や音楽、絵作りも素敵でした。やるじゃん、ブラッド・ピット!←この映画、プロデューサーを務めています。

あらすじ

9歳のシローンは、フロリダ州マイアミに住む内気な男の子。家では麻薬中毒の母親(Naomi Harris)に、学校ではいじめられっ子に追いかけられる毎日だが、唯一親友のケビンだけは話しかけてくれる。ある日いじめっ子から隠れているところを、年上の男(Mahershala Ali)が見つける。男はシローンにご飯を与え、家まで送り届ける。男と彼女のテレサは、シローンにとって第二の家のような存在になっていた……。

感想

めっちゃよかった!!!

お涙ちょうだいとか、政治的とか、ありきたりなゲイ映画にウンザリしている人にはぴったりです。あ、あと、「白人救世主」が出てこないところもよい。

あと、一人の少年が大人になるまで追いかけてるのは、『ボーイフッド』を彷彿とさせました。これは一人の役者が演じきっているわけじゃないですが……「あらまぁ、リトル大きくなっちゃって!」っていう近所のおばさん気分になれます。『ボーイフッド』好きだった人は

あとね、役者陣が、よい味出してます。「ドラッグディーラーだけど、よいお兄ちゃん」のマハーシャラ・アリ。彼の妻役を演じている歌手のジャネール・モネイ(Janelle Monáe)!いつものスタイルとは違い、ぐっとセクシーでめちゃくちゃよかったです♪っていうか素敵すぎて、鼻血でしたっ!そして、007シリーズのナオミ・ハリスもヤバい感じでよかったです。

ドラッグ・ディーラー

第一幕で、小学生のシローンの面倒を見てくれるドラッグ・ディーラーなのですが、いい奴なんですよね!もちろん、その「いい奴」っぷりも、近所の子どもを手なづけて、将来自分のために働かせる「子分」にするためかもしれないのですが……。それにしても、いい奴です。

普段無口でほとんど話さないシローンが「オカマって何?」「ボク、オカマなの?」と聞く場面で、彼がどう答えるか気になりましたが、その返事には泣きそうになりました。

また、彼自身、ドラッグ・ディーラーという仕事を決して誇りにしているわけではありません。シローンの母親にドラッグを使わないようにとアドバイスするものの、そのドラッグを提供しているのは他ならない自分だということに苦しんでいます。またシ ローンからそれについて面と向かって尋ねられた時の苦悩の表情が、心に残りました。

イジメ

第二幕では高校生になったシローンの生活が描かれます。ひょろひょろで、弱い感じに育ってしまったシローンは、学校でイジメられてしまっているのです。(ノД`)シクシク

ドラッグ依存で壊れていく母親と、学校でのイジメ……ギリギリの生活が続く中でも、話しかけてくれるのは幼馴染のケビンです。第二幕ではこのケビン役の子がよかった。

でも、イジメのシーンは辛すぎでした。劇場でも、「オーノー!」とか「やり返せ!やり返せ!」とか大騒ぎしている観客がいました。LGBTをめぐる問題って、法律を作ったりすることで解決するわけじゃないんですよね。人々の心に染み込んだ「ノリ」とか、なよなよしていることで人をからかったり、イジメたりするカルチャー自体がなくならないと、ダメなんですよね。

家族

この映画ムーンライトは、「家族」についても考えさせられます。

ジャネール・モネル演じるテレサは、幼少期から思春期にかけてのシローンにとっての居場所であり、薬物に依存を深めていく母親に代わって、安全な居場所となっています。かといって、シローンと母親の縁が切れるわけでもありません。

崩壊した「家族」をめぐる、この感じはリアルだなーと思いました。なんだろうねー。思い切って縁が切れればいいけど、そうもいかない感じ。親は親で一生懸命愛して、育ててくれたんだろうけれども、それと、子どもにとって必要だったものは違う切なさとか。

典型的なゲイ像が登場しないゲイ映画

第三幕が始まった瞬間、息を飲みます。えええええええッ!これが、シロちゃんなの?完全にクロくなってますっ。

最後、クロ=ブラックとなったシローンを演じるトレヴァンテ・ローデス(Trevante Rhodes)。ムキムキの体に、金歯を入れ、ちょっとコワモテになったブラックなのだけれど、中身は繊細でピュアなままなのが、萌えます。ちょい50 centっぽいイカツイ彼を修飾する言葉としては、そぐわないのだろうけど、可愛いんですよね。キュンキュンしました。

これ、一応、シローンと、幼馴染のケビンの長い長い間の濃い恋物語なのですが、いわゆるゲイ映画っぽくないんですよ。っていうか、今までの「ゲイ映画」がずっと取りこぼしていた層がいるってことなんですけどね。

ウェストハリウッド的なコミュニティでもなく、ファッションや広告業界などのサクセスフルで愉快でケバケバしいゲイ像でもない。もしかしたら、「ゲイ」自認してないすらかもしれない。

ゲトーで育ち、コミュニティ内で期待されるマッチョな男性像にハマりながらも、内心のセクシュアリティーと活動しながらもサバイブしているゲイもたくさんいるんだよなーってつくづく思いました。

そういう意味で「ゲイ映画」っぽさを求めると肩透かしになりますが、ゲイ映画とか関係なく、人が人に惹かれていくピュアな様子が、心を掴みます。なんだろう。ものすごく上質なんですよね。

ラストシーンは、こんな静かなのに雄弁な画面、ないだろうっ!って感じです。

ガチャガチャ、ごてごてのハリウッド映画〜!キラキラのゲイ映画〜!的なのに疲れ気味の方には特におすすめです。

 評価

  • 画面が美しい度 ★★★★
  • 切ない度 ★★★★★
  • ラブストーリー度 ★★★★ 

ムーンライトの日本公開

映画ムーンライトの日本公開は、2017年4月28日です!絶対おすすめ!

映画『ムーンライト』公式サイト