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全米一早く同性婚を認めたマサチューセッツ州、知事がトランスの権利擁護に対してはモゴモゴしてる件

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マサチューセッツ州の、チャーリー・ベーカー(Charlie Baker)知事(共和党)が、LGBT団体での講演中、ブーイングを受けました。

現在、マサチューセッツ州ではHB1577/SB735という法案が審議されています。内容は、家庭・職場・学校以外の場で、性自認による差別を禁止するもので、具体的には、トランスジェンダーの人々に対して、出生時の性別に関わらず、自認する性別に従ったトイレや施設使用の権利を保障します。

ベーカー知事は、この法案が議会で可決されたあと、署名するか拒否権を発動するかという話題に触れ、「法案が自分の手元へ回ってきたら、(民主党と共和党の)両方の意見をよく聞いて署名するか決める」と発言。つまり「拒否権を発動する」という可能性を否定しなかったのです。これに対して、聴衆は激怒。「署名しろ!署名しろ」の大合唱となってしまいました。

「反差別法」で守られるもの

今、差別を禁止する「反差別法」の制定をめぐって多くの州で論争が広がっています。

反差別法が、LGBT保護のための実効性を持つためには、宗教的な例外がなく、なおかつ性自認による差別も禁止対象として含むことが必要です。しかし、実際には性自認による差別を明記して禁じているのは、全米のうち17州に過ぎません。そして、2004年に全米で初めて同性婚を認めたマサチューセッツ州は、まだ性自認による差別を反差別法に含めていないのです。ちょっと意外ですね。

差別禁止法で守られていないトランスジェンダーの人々は、そのために、公共の場に出かけることが難しくなります。何をするにしても「どっちのトイレを使えばいいのだろう」「女子用ロッカーを使ったら、見咎められるかもしれない」という不安と苛立ちとともに行わなければなりません。

「トランス差別を禁止すれば、性犯罪が増える」の嘘

全米を通じて、「反差別法に性自認による差別を含め、トランスジェンダーの人々が、自身の自認と合致するトイレなどの施設使用を認めたら、トランスジェンダーのふりをして、女性や子どもを襲う男性が現れ、性犯罪が増える」などというプロパガンダが行われています。しかし、このような恐怖を駆り立てるような宣伝と裏腹に、現実には、反差別法で禁止される差別に性自認による差別を含め、トランスジェンダーを保護した場合でも、それが、性犯罪の増加につながったというケースは一件もありません。

マサチューセッツ州でも、警察協会のチーフであるウィリアム・G・ブルックス3世さんは「これらの法的保護が、異性のロッカールームやトイレに入って、犯罪を犯すのを隠すために使われると信じる理由はない。既にマサチューセッツ州ないで、同様の保護がある地域で、そのような事件は起きていない」と述べています。

宗教界からも反差別法を支持する声

また、差別禁止を求めているのは、宗教界も同様です。差別を正当化する理由として「宗教」が持ち出されることが多いですが、実際には、平等を信じ、LGBTの人々に寛容な宗教が多く存在します。キリスト教やユダヤ教でもそうです。

マサチューセッツ州内でも、300を超える宗教的指導者がHB1577/SB735を支持しています。

ハーバード大学やマサチューセッツ工科大学などを擁するマサチューセッツ州は、そもそもリベラルな風土で知られています。同性婚以外にも、医療大麻を認めたり、健康保険を義務付けたりするなども、さきがけ的に行なった州でした。そんなマサチューセッツ州でここで知事がトランスジェンダーを保護する法律に対して拒否権を発動すれば、悪い意味でニュースになり、マサチューセッツ州の評判を傷つけることでしょう。知事がマサチューセッツ州と、そしてそこに住むすべての住民のために、ベストな選択をすることを望みます。

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