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自民党のLGBT基本方針、どう評価する?

photo by theglobalpanorama

自民党が「性的指向・性自認の多様なあり方を受容する社会」のための「わが党の基本的な考え方」と「論点のとりまとめ」を発表。話題を呼んでいます。ネットの評価はかなり真っ二つで、手放しに賞賛しているものもあれば、全然ダメという評価まで、幅広い。特にわかりやすいものや、面白かったものを以下に紹介します。ぜひ読んでみて。

個人的な感想

まずは良い点

わたしは、ざっと読んで「思ったより悪くないじゃん、自民党!」とちょっと驚きました。性別が連続的なものである点を含め、性的指向と性自認の基礎知識についてまとまっているうえ、政府への要望案の内容が、かなり具体的で広範囲にわたっていたからです。もし、これらが本当に進めばかなりの進歩だと思います。当事者と話したうえで、不具合や要望などを吸い上げたのだろうということが分かる内容でした。水面下で地道な活動を続けていた方々がいたために、このような内容になったのだと思います。

最近、自民党議員による同性愛者に対するあからさまな差別発言などが相次いで問題になりましたが、政権与党がこのようにLGBTをキチンと問題として定義し、人権問題として捉えていることを明確にしたことには大きな意義があるはず。要望の内容は本当に幅広いのだけれど、まずは、この内容についてしっかり自民党の議員たちを教育するだけでも、相当意味があるのではないかな?

ツッコミどころ

しかし、ツッコミどころもたくさんある。詳しくは上で紹介した論考に詳しく書かれていますが、個人的には特に以下の3点に違和感を覚えました。

  1. 「カムアウトできる社会ではなくカムアウトする必要のない、互いに自然に受け入れられる社会の実現」
  2. 「差別禁止」に対して消極的である点
  3. パートナーシップ制度について消極的な理由を「憲法24条」に求めている点(←文書には書かれていませんが、委員長の見解だと報道)

特に(1)は、どういう社会を目指すのかという一番重要な部分。既に皆ツッコミいれてますが、「カムアウトできる社会」をはっきりと否定しているのが、恐ろしかったです。

カムアウトする必要のない社会というのは、「誰もがカムアウトできる」社会を前提としてのみ実現するものなんじゃないの?カムアウトできる社会、を目指さないで、「カムアウトする必要のない社会」を目指すのは、本末転倒というか……結局「今のままでいい」と言っているようにすら読めました。

(2)の差別禁止については、確かに「罰則付き」にするのがよいかはさておき、差別禁止はキチンと法で定めた方がよいと思っています。

これは、わたしが現実に今差別禁止法の存在する社会(カリフォルニア州)で生きていて、感じる恩恵(それも、具体的にこういう差別を受けた時に、こうやって守られました!というのではなく、法律という形で「差別はよくない」と建前を関係者と共有することで得られた心の平穏という曖昧なものにすぎないのだけど)がものすごく大きいので、確かに実効的かどうかはわかりません。新たに法律を作ることによって既存の差別構造を強化してしまうという問題点については、確かに「なるほどな」と思う点もありましたが、やはりそれでも「差別禁止法がない方がよい」とは思えません。既に自分が今持っている特権を手放したくないだけかもしれませんが……。

「罰則をつけた過度な差別禁止」がダメなら、罰則をつけないとか、過度にならないように、とか何か工夫しながら、政府により権力を与えるという方向性ではなくて、差別を禁止する道は模索できないのかなぁ?と思いました。

(3)パートナーシップについては、古屋委員長が「両性の合意に基づいてのみ婚姻は成立するという憲法24条が前提」という発言をしているようですが、これには注意が必要です。憲法24条の解釈にはいろいろありますが、戦前のイエ制度の解体に基づく個人の尊重および男女平等がその趣旨だとされており、同性婚を禁止する趣旨ではないとういのが通説です。「同性婚を認めるために改憲が必要!」とか言うひともいるけど、実際には現行憲法のままで同性婚は充分いけるのです(法律上は、戸籍法など、異性婚を前提とした文言が存在するため、法改正が必要)。同性婚は、「現行法上、想定はされていない」かもしれないけれど、「禁止されている」わけではないのです。

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